引き続き明智小五郎の下宿時代、大正編です。
亭主殺しで捕まったおかみさんを助けようと明智青年は奮闘するのですが…
それでは、301話からのざっくりとしたあらすじです。
301〜310話
警察に捕まってしまった明智青年は中村さんや波越さんのおかげで牢から出ることができます。しかしそれはもうおかみさんを助けることはできないことを意味していました。今回のことは明智青年だけでなく、波越さんにも動揺が広がっていました。明智青年とおかみさんの両方は助けられないことを知っている波越さんは、明智青年にその苦しい気持ちを打ち明けます。
311〜320話
事実上謹慎の身となった明智青年は、自分の部屋で今までの事件のいきさつを考えているときに、とんでもない自分の間違いに気づきます。もし始めから自分がそこに気づいていれば!「彼女の絶望」に気づいていれば!…しかし全ては遅く、おかみさんは危険な思想犯として死刑に処されてしまいます。生きていく気力も無く伏せってしまう明智青年でしたが、友や仲間、まわりの人たちが彼を助けようとやってきます。
321〜330話
片思いをしていたおかみさんを自分のあってはならないミスで死なせたと自分を責める明智青年。警察沙汰(思想犯疑いの事件がらみで牢に入れられた)になったことで大学も退学になってしまいます。そんな中、中村さんと波越さんは警察講習所(当時)を卒業し、晴れて警察官となります。春、明智青年の心はいろいろと思い乱れるのでした。
331〜340話
ある日友人おはちゃんと中村さん、波越さんが明智青年の部屋を訪れると、書置きを残して明智青年はあてもなく旅に出たところでした。332〜351話の20作は明智青年春の旅「花心」というお話です。旅先で明智青年は、食事処の夫婦にお世話になり、そこに下宿する青年洋一君ときみ子さんに出会います。
341〜350話
きみ子さんと話していくうちに明智青年はやっと少し明るさを取り戻していきます。一方、洋一君はきみ子さんに恋心を抱いていました。洋一君の恋に悩む姿に明智青年は自分の恋を重ねるのでした。明智青年はまたミスを犯しそうになるのですが、悲劇は起こらずにすみます。そして下宿先の主に諭されるのでした。
(325話4コマ目)
自分の間違いを激しく悔いる明智青年。若さゆえに旅先でも再び間違えそうになってしまいます。
人はいつでも基本的に自分本位になってしまいがちですが、それでは視野が狭くなります。また他の人を思いやれないようであれば、立派な探偵または成熟した大人とはいえません。
大人になるにつれて、誰でもどんどん複雑な事柄に対処する力を身につけなくてはいけないようになっていきます。
大人になっても自分本位な人はいますが、そんな人は何も成し遂げることはできません。
明智青年はどうやって名探偵になっていくのでしょうか。その道のりは彼自身の問題だけではなく厳しい時代にも翻弄され、なかなかすぐに到達できるものではありませんでした。今しばらく明智青年と彼をとりまく仲間たちの奮闘におつきあい下さるとうれしいです。
👇こちらもどうぞ!
マンガ「明智小五郎がやってきた」ご案内(コラム) - 明智小五郎がやってきた
おまけの話
マンガの資料を探して、本屋で大正時代から昭和初期(戦前)の本はないかと探すのですが、なかなか難しいですね😓
江戸時代の本はまあまああって、戦後昭和史もまあまあある。
だけど明治、大正、昭和初期はちょっと印象的なところだけをピックアップしたものが多いような気がします。明治なら文明開化、大正はモダンガール、昭和初期はただひたすら戦前、みたいな。
しかし江戸川乱歩の小説からは華やかな都市文化が感じられ、1930年代は戦争ムード一色という感じでもない(江戸川乱歩がそういう描写をしなかった可能性もあるけれど)
大河ドラマ「いだてん」でも四六時中戦争ムードではなく、ドラマの主人公たちのようにオリンピックに賭ける男たちもいれば、普通に毎日の生活を送っている人々の姿もある。
個人的な意見ですが、私は太平洋戦争が始まり激化するまではそんな普通の時代の姿がちゃんとあったと思います。
でも特に(ファッション的なもの以外は)大正や昭和初期の姿は急速に忘れられてしまうのではないかと不安があります。
好きな人以外には、興味が湧かない時代かもしれない。
でもたった100年ほど前の時代であること、普通の生活があっという間に戦争で失われた時代であることから、この時代は政治とか戦局のような大きな出来事だけではなく(それもただ「日本が愚かだったから戦争をしたのでしょう」で終わることをしないで)、多くの普通の人々の文化、生活に目を向けることはとても大切なことだと思うのです。
🌸